この度、第20回の日本統合失調症学会・学術集会を担当させていただくことになりました東京都医学総合研究所の西田淳志と申します。

記念すべき20回目となる節目の大会を主催させていただくにあたり、統合失調症に関するこの20年間の研究の進展と成果をみなさまと共有し、今後の研究や臨床の発展の土台となる大会となることを願っております。

近年、統合失調症の予防・治療・回復のあらゆる場面において、社会環境が与える影響の大きさはますます明らかとなっています。かつて「統合失調症は世界中でおよそ1%の人が経験する」という定説がありましたが、この20年間に蓄積された膨大かつ精緻な疫学研究により、発症率は社会環境によって大きく異なることが明確となりました。また、スティグマの少ない環境や、トラウマ・インフォームドな治療・社会的支援体制が、リカバリーを力強く後押しすることも、多くの実証的研究や臨床実践によって示されています。今や、統合失調症をはじめとするメンタルヘルスの課題に取り組むにあたっては、個人に対する働きかけだけでなく、社会そのものに対する積極的なアプローチが不可欠です。私たちは今、メンタルヘルスを「社会モデル」の視点から捉え直す、新たな時代の入り口に立っているのではないでしょうか。

こうした背景を踏まえ、本大会のテーマを「社会と統合失調症」とさせていただきました。

今回の大会は、原則としてオンライン形式で開催いたします。多くの方々と、時間や場所の制約を超えて、統合失調症研究の最新動向を共有し、活発な議論を行う場とすることを目的としております。

大会では、統合失調症研究を国際的に牽引するゲストスピーカーを多数お招きし、最先端の研究成果をご紹介いただくとともに、その意義や社会的価値について、当事者やご家族を含む多様な立場の方々と共に議論を深めてまいります。

また、副大会長には東京大学先端科学技術研究センターの熊谷晋一郎先生をお迎えし、統合失調症の研究や回復支援において近年注目されている「当事者研究」や「当事者主導研究」の意義についても深く掘り下げてまいります。当事者主導の研究が臨床ガイドラインを変えるに至った国際的な事例の紹介や、その関係者によるシンポジウムも企画しております。

本大会が、統合失調症をはじめとするメンタルヘルスの課題を「社会モデル」の視点から捉え直す機会となり、参加される皆さまにとって実り多い場となることを心より願っております。多くの皆さまのご参加をお待ち申し上げております。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

2025年

第20回日本統合失調症学会 大会長
東京都医学総合研究所 社会健康医学研究センター

西田淳志